リアル最強伝説 秋津

ノンフィクションでお送りする最強伝説

警備で人間の秘められた力を解放する方法を先輩が身体を張って教えてくれた。

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どうもどうも、秋津です。

この前入った現場で5:00-24:30というシフトがありました。奴隷よろしく労働者階級を使い倒す資本論の舞台となった近代ヨーロッパの工場での働き方と完全に一致するシフトですが、そのシフトに三日間連続で入っていた先輩の様子を今回はレポートします。
 

現場に辿りつけないのなら、泊まるしかねぇ

まず、5:00-24:00というシフトで抑えておきたいのは、
 
始発も終電もない
 
ということです。
 
つまり、通うための交通機関がありません。
 
となると、必然的に前の日からどこかに泊まらなくてはいけません。
 
この先輩の場合、三日間連続の仕事ですから前泊からの三連泊が自動的に決まります。
 
さらに、泊まるところは会社のためにできるだけ安いところに泊まらないといけませんから、
 
もちろん、
 
漫画喫茶
 
です。
 
もうこの時点で、40年間毎日欠かさず自分のお店を開け続けてきた定食屋のおじいちゃんくらい身体が頑健で、どんな罵詈雑言にも汗一つかかずにスルーできるほどの鍛え抜かれた精神力を持ち合わせた人間にしかできない仕事であることが分かって頂けると思います。
 

元気だった頃の先輩 

先輩、最初はこのシフトのしんどさを熱く語ってくれました。
 
「俺は前の日から漫画喫茶に泊まって、
19時間も働くんやぞ。しかも3日やで(`・ω・´)+ドヤァ」
 
決して自慢するようなことではありませんが、警備を積み重ねれば19時間のシフトなんて苦にもならないというのは驚くべき事実なので、適当に返答をしてることがバレないくらいで先輩すごいですねという旨をお伝えしました。
 
初日の後半くらいから様子は徐々に変わっていきます。
 
会社の文句を言い出しました。
 
「なんでこんなシフト組むんや。」
「3日も家に帰られずに漫画喫茶とか意味がわからん」
 
いや、ほんとごもっともです。
警備の中ではあまりにもぬるい仕事もありますが、
 
ここの現場は案内業務がメインだったので、常に大きめの声を出しながら通行する人に嫌な顔をされつつ若干、身体を張らないといけない現場です。
 
そして、3ポスト4人の現場だったので1つのポストを30分でローテーションします。ポストとは警備員として立たなければいけない場所のことで、今回が3箇所を4人で回します。2ポスト3名のときは、「2ポ3(にぽさん)」と言ったりします。ローテーションで90分に1回は30分休みが回ってきます。しかし、30分以上の休憩はありません。ご飯を食べる時間も30分、終わるまで業務から解放されるのは最大で30分だけです。
 
激キツではありませんが、
3日間57時間やるかと思うと地獄です。
 
先輩、2日目には口数は少なくなりましたが、
 
「さっきめっちゃ可愛い子が通った。」
「この1時間は誰にも話しかけられへんかった。」
「別に拡声器使わなくてもええんちゃうか。」
 
などなど、交代のときにはそれなりの会話を交わしていました。
 
これだけ厳しい3日間のシフトを二つ返事でokした先輩です。
さすがです。
 

人間の秘められた力が解放された警備員

最終日。
もうこの現場が終わるということで、
先輩のみならず、ここの現場に一度でも入ったメンバーは胸を撫で下ろし、ちょっとした高揚感が漂っていました。
 
  • 5:00-7:00で日勤の現場に行く人
  • 5:00-14:00で当務の現場に行く人
  • 17:00-24:30で夜だけ入ってくれる人
 
みんなが16時間以上の長時間勤務が自分に当たらないかと怯えていた一週間もようやく終わりを告げようとしていました。
 
その地獄の現場を漫画喫茶の行き帰りで乗り越えた先輩。
3日目は、言葉は交わすことはありませんでした。
手に持った拡声器を手渡し足早に次のポストに移動します。
 
顔色が悪いというよりも顔が歪んでしまっている先輩に、
僕もなかなか言葉を掛けることができません。
 
しかし!
しかしながら!
 
ちょうど3日間の合計勤務時間が50時間を越える夕方の17:00頃に、先輩がとうとう口を開きました。
 
もう彼の声を聞くことはないと思っていた僕は、ほとばしる興奮を抑えつつ、先輩の言葉に耳を傾けました。
 
「なんか、休憩に行くと寝てしまうねん。ハハハッ…。。」
 
なんとも不思議な短文が脳を通過していきましたが、
最後の謎の笑い声と引きつった唇の表情に意識を持っていかれてしまい、
その言葉の意味を汲み取れませんでした。
 
「え?どういうことですか?」
 
と聞いてみると、
 
「いや、もう休憩室に入ったら寝てしまうねん。スマホ開こうとか、コンビニのパンを食おうと思ったりしてんねんけど、イスに座ったら寝てしまうねん。ハハハッ…。。」
 
????????
 
ちょっと体験したことのない話に余計に頭がパニックになりましたが、先輩いわく、何かしようという意思はあるけど、身体が動くかなくなるというか、寝てしまうそうです。
 
この話をしてる先輩は終始、上の空で。
何か違う場所に交信をしてるかのような様子でした。
 
おそらく、この休憩の話は脳が強制的にシャットダウンしてるような状態だとは思いますが、人間がそういう状態になるという話は聞いたことがありません。
 
しかも、寝てしまいはするそうですが、25分経つとなぜか目が覚めてしまうということだったので、むしろこれは、長時間警備をやるために最適化された身体の状態を脳が自動的に作り出している。
 
防衛本能であれば、そのまま休ませてくれよって話なのに、なぜか起こされてしまうわけです。
 
もしかすると、これはもう労働基準法などぶち抜き、人間の身体の強さや精神力を凌駕し、真の警備員になるための一つの修行だったのかもしれません。
 
もし、人間の秘められた可能性を開き、警備員としてのステージを駆け上がられたい方は是非、3日で57時間&漫画喫茶で3連泊級の仕事を受けられることをオススメします。
 
いや、ほんとすごいもんを見させてもらいました。
 
ではでは、またまた。
 
秋津
 
P.S.
ちなみに先輩、この三連勤のあとは帰る電車がなかったので、漫画喫茶でもう一泊されてました。
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